グループ「週末の山」 去年8月のログ
真琴
そういえば美咲、結婚の話どうなったの。式、呼んでよね
23:50
真琴
先生には、だいぶ良くなったって言われてる
23:53
亮
画像データ
大学1年の夏合宿の写真。山頂の道標の前で、日に焼けた4人が笑っている。真琴だけピースの向きが逆で、それを拓也が指さして笑っている。
00:05
真琴
1年の縦走だ。私がコッヘル沢に落として、全員カレーの汁だけ啜った日
00:06
真琴
この時間は、毎年だめだね。目が覚めちゃう
02:15
拓也
不思議だよな。俺、この日だけは頭がはっきりするんだよ
02:18
亮
分かる。他の日は、ずっと寝てるみたいなのにな
02:18
真琴
前から言おうと思ってたことがあるんだ
02:19
真琴
午後から崩れそうだなって、ほんとは思ってた。歩きながら何回も空見てた
02:23
真琴
でも自分の膝のことしか考えてなくて、先に下りるほうを選んだ
02:23
真琴
ちゃんと口に出して、引き返そうって言ってたら
02:24
亮
前も言ったろ。あの天気は誰にも読めなかった
02:25
拓也
判断は全員でした。真琴のせいじゃない
02:25
美咲
謝られると、置いてった側みたいじゃない。私たちが
02:26
美咲
それが聞きたくて、毎年この日に来てたようなものだから
02:28
真琴
そういえば去年もこの日だったね、グループ動いたの
02:30
真琴
てか私、引っ越したの誰にも言ってないよ
02:37
美咲
画像データ
夜のマンションのエントランス。人は写っていない。ただ、無人のまま、自動ドアが開いている。
02:39
真琴
ほんとにやめて。悪ふざけならもう怒るよ
02:40
真琴
なら明日にして。明るいときに、駅前とかで
02:41
真琴
待って。今、拓也の番号に電話してみた
02:41
真琴
「現在使われておりません」って流れた
02:42
真琴
ねえ、おかしいよ。じゃあ今このグループで返してるの、誰の回線なの
02:42
拓也
電話は、もう解約されちゃったからなあ
02:42
真琴
エレベーターが動いてる。こんな時間に
02:45
真琴
チャット打ちながら電話できるわけないよね。ねえ、そこにいるの誰
02:48
真琴
でも、ドアの向こうで笑い声がした気がした。3人の
02:50
真琴
テントの中で夜中に笑うときの、あの押し殺した笑い方
02:50
真琴
なんでこんなことするの。今日だけは、この日だけはやめてよ
02:52
真琴
行けなかったの、忘れたからじゃないよ
02:58
真琴
3人の名前が並んでるあの石を見たら、あの日が全部本当になっちゃう気がして
02:59
真琴
ずっと、どこかで思ってたの。またこうやって、チャットが動く気がしてたから
02:59
真琴
明るくなってから、ベランダに出てみた
06:31
真琴
手すりに、カラビナが3つ、きれいに並べて掛けてあった
06:31
真琴
あの日、3人のザックについてたやつだ。色まで覚えてる
06:32
※「美咲」「拓也」「亮」の各アカウントは、3年前の8月の遭難事故ののち、ご遺族によりすべて解約されています。このログの返信が、どこから送信されていたのかは分かっていません
※グループ「週末の山」は今年の8月も、深夜2時13分に動き出しています
END OF LOG