遭難当日のグループログ
千紘
最後に見たのガレ場の手前。ガス出てきて、振り返ったらもういなかった
16:22
修
了解。このガスで散開はなし。二次遭難のほうが怖い
16:23
修
尾根の平場でテント張って待つ。健太は経験あるから、はぐれたら動かないのは分かってるはず
16:23
修
圏外。メッセージはたまに飛ぶっぽいから、拾えたら儲けもの
16:25
修
健太へ。読んだらその場から動くな。ライト点滅。テントは尾根の平場
16:26
修
装備の確認。健太が持ってるもの、思い出せるだけ挙げてくれ
16:30
洋平
レインウェア上下、ヘッデン、行動食は今朝コンビニで買ってた。羊羹とパン
16:31
千紘
水は1リットルくらい残ってたはず。昼の沢で汲んでた
16:31
千紘
気温もどんどん下がってる。健太、ツェルト持ってないんだよ。私のザックだから
17:11
修
分かってる。だから今夜中に位置だけでも掴みたい
17:11
健太
平気。ガスで一本東の尾根に入ったっぽい
17:43
修
それでいい。位置共有できるか。GPSは圏外でも拾える
17:45
修
位置、北東の谷底になってる。直線で2キロ先
17:48
洋平
北東? 東の尾根って言ってなかったか
17:48
修
GPSの誤差かもな。谷は電波弾かれるし
17:49
千紘
山だと数百メートルずれることあるしね
17:49
洋平
ん? 標高計って時計のだろ。電池関係なくね
17:51
修
動いてる。谷底からこっちに向かってきてる
17:58
修
夜の行動は禁止だ。その場でビバークしろ
18:00
修
手がかじかんでるのかもしれない。判断保留
18:03
千紘
ピン、まだ動いてる。等高線をまっすぐ横切ってる
18:20
洋平
この斜面、昼間でも巻くとこだぞ。直登とかありえない
18:20
千紘
あと気づいたんだけど、共有画面の電池表示
18:21
修
方針。返信は最小限。既読もつけない。通知画面だけで見る
18:22
修
本物の健太だった場合に備えて共有は切らない。ただし、あれが健太だという前提はもう置かない
18:23
修
110つながった!状況伝えた。地上の救助隊が今夜登山口から入る。ヘリは夜明けと同時
19:08
修
俺たちの座標も伝えた。「今夜は絶対にテントから出ないでください」とのこと
19:09
19:31 健太がボイスメッセージを送信しました(0:04)
洋平
おい、俺たちの人数、チャットで言ったことあったか
19:37
修
ない。遭難者は健太一人だとしか送ってない
19:37
修
ライト消せ。声も出すな。以降、この画面の明るさも最低にしろ
19:38
千紘
(テントの布に、外から何か触れてる。風じゃない。指みたいに一本ずつ)
21:44
修
(朝まで誰も外に出るな。トイレも我慢だ)
22:01
修
南のガレ場の下の棚。はぐれた場所のほぼ真下だ。滑落して動けなくなってた。低体温だけど命に別状なし
06:17
千紘
健太のお見舞い行ってきたよ。もう歩けてた
14:02
千紘
笑い話じゃないほうの話も、しないといけない
14:04
千紘
健太、私の顔見るなり「ありがとな」って言ったの
14:05
千紘
「夜、ずっと呼んでてくれたろ。3人で」って
14:06
千紘
「棚の上で寝たら終わりだと思ってたとき、上のほうからずっと、修と千紘と洋平の声で名前呼ばれてた。おかげで朝まで起きてられた」って
14:07
千紘
「寒かったろ、悪かったな」って笑うの
14:07
千紘
だから言えなかった。あれ、私たちじゃないよって
14:09
洋平
どういうことだよ。じゃあ俺たちのとこに来てた「健太」と、健太のとこに行ってた「俺たち」で
14:10
修
それより千紘、健太のスマホの話は聞けたか。位置共有のログを警察に渡したい
14:11
千紘
健太のスマホ、初日の昼の休憩のとき、沢に落としてるの
14:12
千紘
「はぐれる前にもう無くしてた。だから連絡できなくて焦った」って
14:13
洋平
じゃあ17時42分の「ごめん、まいた」は誰が送ったんだよ
14:14
洋平
最初のやつだぞ。まだ全然普通だったやつ
14:14
千紘
あの時点で私たち、まだグループに何も送ってなかったの。「はぐれた」も「探してる」も、一言も
14:17
千紘
なのにあっちは、こっちが探してることを知ってて、先に謝ってきてる
14:18
千紘
最初から、ずっと見られてたんだよ。私たちのほうが
14:18
このグループに「健太」のアカウントは今も残っている。本人は新しいスマホで新しいアカウントを作り直したが、古いほうのアカウントは、いまも時々オンラインになる
END OF LOG